雪山は寒い、暗い、怖いなど危険なイメージが先行して、今一歩躊躇されてる方が多いかと思います。それでも仲間の話、美しい写真や映像などで雪山シーンを想いワクワクしたことあるのではないでしょうか? 雪山を目一杯楽しむためには、技術体力を備えているのはもちろん装備を完璧に揃えスムーズに使いこなせるかも重要になってきますです。1902年、八甲田山雪中行軍遭難で199名もの死者を出した事故。当時としてはベストと思われていた服装や装備も、大自然の猛威に対し全く対応出来なかったことに大きな要因があります。もちろん遭難された兵隊は、現代の我々より体力や精神面で格段に優れていたハズです。もしゴアテックスのジャケットを着ていたら…もし熱々のお湯が入ったポットを持っていたら…誰一人遭難することは無かったでしょう。今は山に入る準備段階でしっかりとした道具を揃えてさえいればその山行は80%成功です。そして大成功100%に至るためには…言わずもがな日々あなたの鍛錬にかかってくるのです。
冬季用登山靴は、概ね三層構造で保温材にプリマロフトなどがサンドイッチされ、3シーズン用に比べると格段に暖かい。もちろんゴアテックスなどの防水透湿素材も使用されている。ソールはワンタッチアイゼン装着を前提に爪先と踵にコバが付き、屈曲して外れないようシャンクが入れられ硬度が保たれている。最近は軽量化も進み3シーズン用から履き替えても違和感が無い。
素早く装着できるワンタッチアイゼンがおススメだが、ソールの爪先と踵にコバが付いているブーツ専用となる。踵のみコバが付いているブーツにはセミワンタッチアイゼンの用意がある。標準は12本爪だがサイズの小さい女性は10本爪でもOK。軽アイゼンや前歯が出ていないアイゼンは、登り傾斜がきつくなると爪が刺さらず難儀する。アルミ等の超軽量アイゼンは、岩場を含むミックスルートで使うと爪の減りが早いので、ザック内での携行時間が多いスキーツアー向きである。
岩壁登攀やアイスクライミングを含まない一般ルートなら、カーブの少ないまっすぐなシャフトが使いよく、適度に重いほうが軽い力でもピックやブレードを雪面に刺し込みやすい。トレッキングポールは構造上アイスバーンには刺さらないうえ急斜面では抜ける。また強度が低いので耐風姿勢をとった時など耐えられないので、ピッケルの代用になり得ない。
ハードシェルとも呼ばれ一番外側に着用する。初冬や残雪期ならレインウェアーでも代用出来るが、烈風や滑落時には破ける可能性もある。生地は3レイヤーでゴアテックスプロなどワンランク上の防水透湿性素材が奢られ、生地表面は滑落時の滑走スピードを抑えるため若干ザラついた仕上げとなっている。厚手のインナーを着用していても肘や膝がスムーズに動くよう立体裁断され、それに伴いフィット感が増し風によるバタつきも抑えられる。部位によって伸縮素材が使用されているものもある。フロントやポケットのファスナーは、グローブを着用したままスムーズに開閉出来るよう大きさや形状が工夫されている。登山ウェアーの中でも最先端の素材を使用し最新の機能を有するため高価ではあるが、厳冬期の雪山と対峙するということを認識し妥協の無い選択をしたい。
無積雪時と同様透湿速乾性が優れているものを選ぶ。冬用は厚手が多く着用枚数が減ることにより温度の調整幅が狭くなるので、薄手のものを多めに重ね着しこまめな脱着で体温調整をしたい。服装調整を怠ると多量の発汗によりジャケットが凍結し透湿性が損なわれる。
ゴアテックスなどの防水透湿素材を使用しているアウターと、ポーラテックなどの保温素材を使用している薄手のインナーと重ね履きが原則。さらに寒い場合はミトンタイプのオーバーグローブを被せるが細かい作業は不便になる。アッパーにレザーを使用しているものは柔らかくフィット感があり暖かいのでおススメ。アイゼン装着など外気に素手をさらし続けると凍傷になりやすいので、手袋着用のまま作業できるよう練習をしておきたい。
皮膚はチョットの油断であっという間に凍傷になる。保温の為というより防風を優先した素材を使用しているものを選ぶ。ネックウォーマーを鼻まで上げると代用にはなるが、呼吸気でゴーグルが曇る場合がある。
強風や吹雪の時には必須。二重レンズで曇り止め効果のあるものを選ぶ。最新の高機能レンズは雪面の凹凸が良く見えるので滑り系の人には嬉しい。
極寒で熱々の飲み物を頂けると実に生きた心地がする。おさ湯の他スープやココアなどお好みでよいが、お茶やコーヒーは利尿作用を伴うので出来れば避けたい。最近のポットは抜群の保温力を誇り朝入れた熱湯でカップラーメンの調理も可能。水筒の代名詞サーモスの「山専」は、真空構造を採用し保温力もさることながら耐久性でも他の追従を許さない。
つぼ足では前進ままならない深雪も、圧倒的な浮力を武器に歩行を可能にする。硬雪でも複数の爪を持ったソールでグリップを確保している。平地や緩い傾斜の雪面を得意とする半面、急斜面やトラバースは苦手。重量はワカンに比べると倍以上あるので、ザックに装着し長時間携行する気にはならない。
ナイロンベルトとジュラルミン製の本体で組まれ、シンプルな構造ゆえ軽く携行性に優れる。浮力ではスノーシューに敵わないが、アイゼンを装着したまま取り付けられるので、アイスバーンから深雪のラッセルまで幅広く対応する。変化に富んだ日本の雪山にはベストマッチといえる。
雪崩のリスクが大きい雪山へ入る場合、パーティー全員が常に装着し電波発信状態のまま行動する。雪崩に遭遇し埋没者が発生した場合、スイッチを受信に切り替え埋没者の電波をキャッチし埋没地点を特定し救助作業を開始する。現在は高精度なデジタル仕様のトリプルアンテナが主流で、ビギナーでも音の強弱やディスプレーによる直観的な操作が可能になった。とは言え危急時に落ち着いて的確に対応出来るようトレーニングは欠かせない。雪崩ネットワーク等のセミナーに参加し知識を得ることは有意義ではあるが、リスクのあるタイミングでリスクのある地点に進入しないことが大前提である。
雪崩による埋没者救出のためビーコンで埋没地点を絞ったのち、棒状のプローブを雪面に突き刺しながらピンポイントで位置を特定する。アルミ製は若干重いが耐久性は高く氷付きが少ないので素早い組み立てが可能。カーボン製は軽量でかつ強度がありしなりにくいので正確なプロービングを可能にする。
雪崩現場で埋没者の掘り出しには欠かせない。また雪山で宿泊するための雪洞堀りや防風壁作り、雪上ランチを楽しむためのテーブル作りなどで活躍する。折り畳みや分解できる柄が付いていて、ブレードを含めフラットになるものがザックへの収納がし易い。軽量化を図るため強化プラスチック製のもあるが圧縮され凍結した雪塊には歯が立たないので、アルミなどの金属製が主流である。
Written by Ryoji Hoshino
© 2013 bistari guide